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広島高等裁判所 平成10年(ラ)36号 決定 1998年5月26日

抗告人 宗田和信

事件本人 宗田さよ

主文

一  原審判を取り消す。

二  本件を山口家庭裁判所下関支部に差し戻す。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由

別紙即時抗告申立書記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  本件の事実関係は、次のとおり訂正するほか、原審判の二の1から4まで(原審判1枚目裏8行目から3枚目裏1行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

(一)  原審判2枚目裏7行目から同8行目にかけての「意志能力」を「意思能力」と、同11行目の「差し支えないことから」を「差し支えないなどとして」とそれぞれ改める。

(二)  原審判3枚目表7行目と同9行目の「意志」を「意思」と改める。

2  前記1の事実によれば、事件本人は一応心神喪失の常況にあるものと認めるのが相当であるところ、家庭裁判所は、調査の結果、事件本人が心神喪失の常況にあると認めた場合には、禁治産制度の目的(本人の財産保護及びその療養看護の必要性)からみて必ず禁治産の宣告をすべきであって、これをするかしないかの裁量の自由を有するものではないと解するのが相当である(民法7条は「宣告ヲ為スコトヲ得」とあるが、これは家庭裁判所に権限があるということを意味するにとどまり、宣告をするかしないかの裁量の自由を家庭裁判所に認めた趣旨とは解されない。)。

3  よって、これと異なる見解に立って、事件本人の鑑定をすることなく本件申立を却下した原審判は不当であるから取り消し、本件については上記の鑑定及び後見人の選任等についてなお審理を尽くさせる必要があるので、本件を山口家庭裁判所下関支部に差し戻すこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 日高千之 裁判官 野々上友之 太田雅也)

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